伊丹空港保安検査


 全日空(ANA)によると、26日午前7時すぎ、大阪(伊丹)空港の全日空便の保安検査場で、女性係員が手荷物にナイフを持ち込んだ乗客を見つけたが、誤って乗客に返却した。係員が誤った対応に気付き、約2時間40分後の同9時40分ごろから、搭乗待合室にいた他の乗客も含めて全ての手荷物検査をやり直し、空港ターミナルが混乱している。

 保安検査場を約2時間にわたって閉鎖し、検査場を通過した乗客らもいったん外に出すなどして安全を確認した。同社によると、この影響で午前9時40分以降の全便の運航を見合わせ、遅延や欠航が相次いだ。午前11時50分現在、到着便を含めて計14便の欠航が決まった。

 捜査関係者によると、40~50代男性が折りたたみナイフを1本所持し、係員が誤って「この長さなら大丈夫」と通したという。

(神戸新聞より)

 この事故により、南側ターミナルは午前9時30分ごろから午前11時59分まで約2時間30分にわたり閉鎖となった。伊丹発着の28便が欠航となった。
男性が持っていたのはアーミーナイフ。航空法第86条では、刃物などの危険物の機内持ち込みを原則禁止している。保安検査員は男から持ち込んで問題ない旨の説明を鵜呑みとし、保安検査を通過させた。

 ANAは保安検査場の入場を停止後、搭乗済みの乗客も降ろして再検査を実施。午前11時44分までに、南側保安検査場を通過したすべての乗客を一般エリアに誘導し、正午から保安検査を再開した。

問題の男は特定されず、事態収拾前にナイフを持ったままANA機に乗って伊丹空港を離れた様だ。

何が起きたのかは想像の域は出ないが、この事例をどう学ぶかを考えたい。

この事故の根本原因は、保安検査でナイフを男に返却した係員の「判断ミス」だ。保安検査では、ハサミでさえ機内持ち込みを禁止されることもある。

判断ミスに対する対策は、更に分析しなぜ判断を誤ったかを特定しなければならない。

係員のミスさえなければ、問題は発生していない。
しかし問題の影響がここまで拡大したのは、係員のミス発生後の対応に問題があったと考えられる。

我々製造業に馴染みのある表現で言えば、不良発生後の修復処置が適切でなく問題の波及範囲が拡大してしまった、ということになろう。

この様な事態が発生した場合の修復処置手順は以下の様になるだろう。

  1. 保安検査を通過した乗客(搭乗済みの乗客を含む)全員を保安検査前に戻す。
  2. 保安検査後のエリア、搭乗開始済みの機内で問題のナイフを捜索する。
  3. 捜索終了後再度保安検査を実施。

今回の事件の影響が拡大したのは、修復処置に手間取った、且つ乗客への情報提供が不十分だったからだろう。

しかも問題のナイフとそれを持った男は、発見されていない。

7時から9時40分まで修復処置に手をつけられなかったのは、この様な事態が想定できていなかったためと考えられる。今回の問題は保安検査で100%食い止めるめるべき問題ではあるが、この関門が破られたら、という想定をするのが未然防止だ。
「関門が破られたら」という想定をFMEAでは「潜在不良」と定義している。


このコラムは、2019年10月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第883号に掲載した記事に修正加筆しました。

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